2015年06月12日

◆矢野歴史講座15-「掟」について

矢野歴史講座、今回は荘園時代の村-惣村そうそん-における自治の特徴の一つ、「掟」(惣掟そうおきてについてみていこうと思います。

「掟」と聞くと何か怖いイメージがありますね。みなさんはどうですか。「掟」とは一体どういうものだったのでしょう。たぶん矢野町の14集落でも現在、村の「掟」が残っているところはないんじゃないでしょうか。「掟」は成文化されることが必須ではないので、たぶんそれは今では道つくりや溝掃除などのいわゆる普請(共同作業)としての決まりやお葬式での取り決めが慣習として存在するのだと思います。

以前、中世から存在する村落の自治組織として主に東北地方に残る「契約講」という組織をここ(http://yanochohiroba.tenkomori.tv/e274347.html)で紹介しました。今回その契約講の「掟」をみてみましょう。



ここに宮城県石巻市北上町の行人前村に残る『契約講中掟覚帳』という古文書があります(上写真)。弘化3年(1846)とありますから江戸時代の末期に書かれたようです。「覚帳」とあるように、年2回ある「契約」(今でいう自治会の総会にあたる)で決議されたこと、あるいは村の出来事が記録されています。いわゆる今でいう議事録です。その議事録がつづられる前段ページの最初の紙面に「掟」という文字が書かれています。

「掟」の内容は、最初に「契約」(総会)が期日に間違いなく執り行われることとうたわれ、契約講の人員、「契約」(総会)は必ず出席すること-個人の所用で欠席しないこと、葬式の互助について「地取(じどり)」「陸尺(ろくしゃく)」「飛脚」といったそれぞれの役割が細かく書かれています。また、集落内の互助作業「結」についても家を建てたり屋根の葺き換え等入り用があれば手伝うこととあります。

そして、「掟」の最後に「右の通り取り決めたので間違いなく固く守るようにし、それぞれが心掛けて日々の生活をおくり、もし背く者があれば仲間一同(契約講員を「仲間」と呼んでいます)が集まって吟味し、講員から除外する」ことが明記されています。つまり、「掟」に背いたら罰則があったわけです。当時は講員(=「仲間」)からの除外が最も厳しい罰則だったようです。共同体を外れると生きていけませんから。この記述の後に講員全員による連判が続きます。

時が下って明治4年(1871)に7条からなる新たな「掟」が追加されたようです(下写真)。一つずつ見ていくと、

 ①朝夕の礼儀を堅く守ること(挨拶)
 ②老人を敬い仁義を尽くすこと
 ③同輩と交わり喧嘩口論等しないこと
 ④同輩のことを陰日向で悪口を言わないこと
 ⑤他村で口論等が起こったときは見捨ててはならない
 ⑥たとえ酒の上のことであっても他人の悪口を言ってはならない
 ⑦取り調べや話し合うことがある時はただちに集まって寄合をすること


となっています。これらをみると、村落(あるいは今では地域)が他人との関係性のなかで人を作り、育ててきたことが分かります。



そして、この箇条のあとに「家の者(妻子供)にも普段から言い聞かせておくこと」「背いた者がいる場合は、講員で取り調べの上五貫文(銭五千文)の罰金を申しつける」ことになっています。ここで「掟」に背いた罰則が講員の除外ではなく罰金になっているところは興味あるところです。

このように「掟」の中身を見てくると、「掟」とは共同体という「仲間」内での決め事といえます。それらは自分たちで寄り合って決めたものです。ですので、一揆に通じる連判を行うことによって堅く守ることを誓ったのでした。それに背くと当然のごとく罰せられたわけです。

そして、この「掟」の有り様から「契約講」で使われるもともとの「契約」という意味が見えてきます。すなわち、「契約」とは「仲間」(共同体)で取り交わす決め事、約束だったのです。

次回、「掟」をもう少し掘り下げて、「掟」の現代的意義について考えてみたいと思います。




タグ :契約講

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Posted by 矢野町交流広場 at 12:33│Comments(0)矢野歴史考
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